ファミリー

オレンジの可愛いバラをプレゼント用にラッピングしてもらった。
潤平の6歳の誕生日である。
娘宅の玄関を開けると妹のかえでが、すっとんで来て出迎えてくれる。



「ジュンく〜ん、おたんじょうび おめでとお〜♪」と
花束をみると我がことのようによろこび、兄貴のところに走って持っていく。
彼は奥のリビングで、父親と何やら観ている。
プレゼントの「カードゲーム?」の使い方をビデオで見ているらしい。
きょうびの、幼児の遊びも先にレクチャーを受けねばならない。
むずかしそう。
複雑で、親も大変だ。


「ばぁば、ありがとう〜」
「たんじょうびのプレゼントも、ありがとう〜〜」
父親の休日でもある。
みんなで「トイ・ザラス」へ買いに行ったようである。


ばぁばも一緒にと言われたけれど
こちらはあいにくと細々と仕事がある、辞退した。
潤平は、お目当てのモノをゲットしてご機嫌だ。


とーちゃんやママや、オジさん(娘の兄)からも
プレゼントは渡されており、年に一度のセレモニーは
クリスマスと同じぐらいの感激だろう。
一段と輝いている。


3歳のかえでは、花束の意味がわかるらしく、
「かっちゃんもおたんじょうび なったらくれる?」と催促し
花束をいとおしそうに抱いたり、愛でたりしている。
やっぱり女の子である。
潤平は花よりダンゴだ。


婿殿の休みがこの数年ぐっと減り、週に一度の平日になった。
その分、貴重な家族とのだんらんになる。
チビたちの誕生祝いの宴も、このところ遠慮していた。
しかし潤平の「誕生パーティ、ばぁばも来て!!」の
誘いにホイホイと乗っているわたしである。


ビデオでのレクチャーが終わると、とーちゃんと潤平は
さっそく、カードを広げてゲームを始めた。
見ていてもこちらは、さっぱりわからない。
エネルギーと集中力が要りそうだ。
「疲れない?」婿に訊くと
「疲れます」
父親の出番はありがたい。


漬け物石のように、かっちりと重たくなった4か月の赤ん坊を
抱きながら、かえでと一緒に彼らの遊びを見守る。
ママは、汗だくになりキッチンで奮闘している。


パーティのメニューは、潤平のリクエストで
「いなり寿司」「鶏のから揚げ」「エビのから揚げ」「サラダ」の好物が並ぶ。
タルタルソースもすべて手作りである。
いなりのアゲも甘く煮込んでありふんわりしている。
エビや鶏のから揚げもレストランに負けないほど、さっくり揚がり
味がしみ込み、おいしい。
当の主役より来賓であるばぁばの口が忙しい。


料理に関して「まめですわ〜」婿殿も感心するようにわたしに言う。
確かに、食べること、作ることが好きそうである。


ケーキも潤平のリクエストで手作りの
「レアチーズケーキ」だ。
シンプルだけど気持ちのこもった誕生ケーキ。
手書きのメッセージもちゃんと付いている。



みんなで大きな声で歌いローソクを消す段になると・・
かえでが真っ先に主役のそばに来て、一緒にふう〜〜〜。
「かえでが一緒に消したぁ〜ボクのたんじょうびなのにぃ〜」
潤平は不服そうである。
まったく、かえでも抜け目がない。
兄妹だから許せ、潤平。


「七五三」の絵を額に入れたものを娘宅にプレゼントしようとしたら
「飾るところがない・・」と却下された。
で、持って帰ることにしたのだが
「やっぱり額はもらっとくわ〜」
「無理にもらってもらわなくて結構、持って帰るわ」と押し問答していると
「お義母さんが描いたんですか!すごいですねぇ〜」
婿殿の一声で、額は残ることになった。


潤平たちも喜んでいるのだが、実物より可愛く描けてないのが
ママには不満のようだ。


料理も縫物も子育ても「それなりにやる」のに親への斟酌などは皆無だ。
下手でも喜んでくれたら、こちらも嬉しいものを。
婿殿はその点、大人だ。


でも、ケーキや料理の残りをタッパーに詰めて持たせてくれた。
最近は親子が逆転している感があるが、まいいか。


なんだかんだ言っても気の置けない家族である。
つつがなく、安寧に暮らせることに感謝している。
三人の元気なおチビたちは、何よりの大きな宝物だ。