これは羊頭狗肉ではないか?

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万博公園のバラ 高雄

 

 

 血管が若がえれば 健康寿命はのびる。

   糖尿病、高血圧、心臓病、脳卒中………。

         最大の原因は、不健康な血管にあった。

         血管を若がえらせ、老化と病気を予防するヒントが満載

  石井光 (1260)

 

またまた新聞(428日付け日経朝刊2面下部)の書籍広告の話である。

 

腑に落ちない話は世の中には数多あるが、上記の広告もよくわからない。

そこで詳しい知人に手引きをしてもらい調べてみた。

結局行き着いた結論は、羊頭狗肉ということか・・・。

 

八百屋も魚屋も食品販売を生業(なりわい)としていることには違いがないが、

八百屋のオヤジさんが語る魚の説明は信用するわけにはゆかない。

こうした疾病関連の書籍は、通常○○大学医学部教授や

○○大学付属病院医師など仰々しい肩書が付されて目を引く仕掛けが

されている。

しかしこの本には、肩書も執筆者の紹介もなく得体の知れない読み物では?

疑問を抱いてしまった。

 

まず著者をグーグルで検索してみた。すると、

医療法人社団光人会、新日本橋石井クリニック、院長石井光とある。

堂々とした院長の写真から筆者は女医と判明。

更に同クリニックにはANK東京がんセンター」ともある。

 

 記載されている経歴は下記。

  ・昭和47日本医科大学卒業、東京女子医科大学外科入局

  • 昭和49埼玉医科大学消化器内科助手
  • 昭和52年 城西歯科大学非常勤務講師(内科)
  • 昭和52年 医療法人社団 積仁会 旭ヶ丘病院副院長
  • 昭和58年 学位取得(Idenitification of Insulin in the Human Pancreatic Juice
  • 昭和62年 米国マウントサイナイ病院客員研究員
  • 平成5年 医療法人社団 昭愛会 水野病院内科部長
  • 平成8年 医療法人社団 光人会 新日本橋石井クリニック 開設

 

·         日本消化管学会代議員

        ·         日本消化管学会胃腸科認定医

        ·         日本医師会認定産業医

 

更に「当クリニックは1996年開業以来16年が経過し

その間に3万件以上の内視鏡をおこない、多数の

食道・胃・大腸の早期がんを発見しました」とある。

 

なるほど、同医師は消化器内科か外科の専門医であり、3万件以上の

内視鏡検査をしているから、消化器内視鏡の専門医ではと解釈できる。

 

そこで、下記医学会(いずれも日本専門医制評価・認定機構に所属)を検索し、

同医師の認定医・専門医の有無を調べてみた。

      日本内科学会。

      日本外科学会。

      日本消化器病学会。

      日本消化器病外科学会。

      日本消化器内視鏡学会。

 

 驚くなかれ、推定年齢65歳の医師でありながら、

また年間3万件以上の内視鏡検査を実施している医師でありながら、

日本内科学会の専門医でもなく、また日本消化器内視鏡学の会員で専門医でもない。

 

 またプロフィールに記載されている「日本消化管学会」の認定医とあるが、

この医学会自体が日本専門医制評価・認定機構に所属していない。

また日本消化管学会代議員とあるが、名簿を調べたが同医師の記載はない。

 

 素朴な疑問は、消化器を専門とする医師が、なぜ血管関係の

書籍を執筆するのだろうかということである。

日本では医師の免許があれば、すべての科目の診察が出来ると聞いているから

あらゆる科目の書籍を書いても法に触れることではない。

でも、こうしたことは、あっていいのかなぁと首をひねる。

 

 本当のプロ(専門家)は、己の専門分野以外に

触れない不文律や矜持があると思っていた。

 

しかし読者は八百屋のオヤジさんが語る魚の講釈を買わされるのか。

藁にもすがりたい疾病者は、何かの助けを求めて書籍を購入する。

安心して読めるのだろうか。

 

 一方この書籍の出版は、出版界の名編集者として名を馳せた

見城徹氏が設立した幻冬舎である。

同社は、売れる本や話題をさらう書籍を常に世に問うている会社と聞く。

同氏を検索すると同氏の名言集なる項目があり下記があった。

 

  僕が一番嫌いなのは、小手先とか、表面的とか、

  上辺とか、それが一番嫌なの。

  それでやってる限り、結局出てくる結果も、上辺や、

  表面的や、小手先でしかない。

 

 血管といえば、循環器内科医や心臓血管外科医などが専門とする分野と聞く。

こうした専門医でない医師が執筆した書籍を販売するのは、

『小手先』に属する行為ではないのか。

 

 だから新聞広告は、著者の肩書を外したのではないかと納得した。

このブログは特定の人や団体を中傷するために記したわけではなく

私たちが賢く生きるために書いた。

 

 次回は、昨秋読んだ小冊子の『血管は履歴書』と題した文章を紹介しよう。

「人は血管とともに老いて動脈硬化が進行する」(JR仙台病院長、

市来正隆医師による)の趣旨である。