簡素にして贅沢なランチ?


勤めているとき、週の3日ほどはお弁当を持参していた。
事務所の談話室で己の娘のような歳恰好の女性と
ワイワイしゃべりながら食べるのもいい。
彼女たちから得る情報も楽しいものがあるからである。
お昼のワイドショーを見ながら、
みんなでお茶を飲みくつろぐことも好きだった。


前夜の残り物や卵焼きやシャケの焼いたものなどが
おかずの定番であるがこんな質素なものがけっこうおいしかったりする。
寒い季節にはインスタントの味噌汁を作ったり、
隣のホテルでスープを求めたりすることもあった。


ひとりになりたいとき、近くのパスタのおいしい喫茶店で
食事をしたあと、ゆっくり本を読んで過ごす。
このような昼時を過ごすのも良かったなぁと、今思う。


昼ごろになるとオフィス街には、たくさんの業者が
軽トラックで弁当を売りにやってくる。
そしてそれはいつも長蛇の列である。
お茶つきで見栄えもよくメニューも和洋中華と
何でも揃っており1食400円前後と安い。
お弁当が500円を切ったのはいつ頃からだったろうか。
今の時代、安くなければ売れないという悪弊があり
生き残りをかけた業者さんの苦労を想像したりする。


夫婦二人でやっているお惣菜屋を、わたしはよく利用していた。
おにぎりも、オムレツもお寿司もすべて手作りのため
正午を少し廻っただけで品切れになるほど繁盛している。
近くに専門学校がありその生徒が買いに来るせいもあるけれど
何と言ってもおいしいのと、添加物を使っていない安心感があった。


いまはわたしは毎日家にいるようになり、ランチを外で摂ることが少なくなった。
わが家のランチは質素で、簡素なメニューの繰り返しである。
最近は魚を多く取るようにしていることもあり食卓にはそれが頻繁に並ぶ。


今の季節、サバの味噌漬け、納豆と、味噌汁、
きゅうりや大根の糠漬けが主である。
サバは一匹買いしたものを新鮮なうちに3枚におろし、すぐ味噌漬けにする。
味噌がしみこみ、焼いたときの香ばしさと味がたまらない。
さばが別の料理に変化している。


その理由は、僅かながら高額な2種類の味噌にこだわり
まぜ合わしていることに“技”があるのか、と
思ったりして、毎日食べても飽きないほどである。
生のサーモンの切り身をムニエル風にして食卓に載せることもある。
それに、サラダや、常備食のきんぴらなどの惣菜が加わることもある。
どれも簡単メニューばかりで、味噌汁の具が変わるだけの簡素な昼食である。


何の変哲もない日常の、代わり映えのしないお昼ご飯さえ
わたしには、しあわせと思える日々である。



江戸系・古希の色
一番うえの画像は江戸系・猿踊り