娘の憂い

「切なくなるのよね」娘がいう。
近くに住む姑の、孫である潤平への扱いについて、である。


娘の夫は3人兄妹の真ん中である。
2歳違いの兄がいて、6歳下の妹がいる。
それぞれ結婚して同じ町に住んでいる。


婿殿の実家には長男夫婦が同居している。
車で10分ほどのところに住む兄妹たちは
盆暮れ以外にも行き来し、それなりの距離を保ち暮らしている。


長男の嫁は、次男の妻である娘とは2歳しか違わない。
料理好きな、よくできた人だと兄嫁にあたる彼女を
娘は評価していて嫁同士、仲が良い。


問題は、この3人兄妹の子どもの歳が、みな一緒であり
比較されるということ。


長男夫婦の子どもと潤平は2ヶ月違い、妹夫婦の子どもとは
3ヶ月ほどしか違わない。
幼稚園や学校へ行くようになると孫が3人同じ学年になる。
あちらの両親も大変である。
おまけに第2子が、また3人揃って同じ学年と来ている。


そんな賑やかな係累のなかで、婿殿の妹の子どもは、
嫁に出したという意識があるのか、姑は
さほどの執着心は持たないようである。


ところが、わが潤平と長男夫婦の男児には
人一倍、競争心を抱いている。


姑にとって一緒に暮らしている孫が、「いつも一番」でないといけない。
確かに身近にいて、育つさまをみていると
離れてくらしている孫より可愛さが募るのは理解できる。
で、なにかにつけ二人の孫を差別する・・・らしい。
これは、潤平が生まれた直後から続いている。


先日、その両親と婿殿の車で墓参りに行くことになった。
長男夫婦から孫二人の子守を頼まれた・・ということで
総勢子ども4人、大人4人で出かけた。


案の定というか・・・
車の中で潤平たちが屈託なく遊ぶ中、すべてにおいて
長男の孫を優先し、ほめ、「○○が一番!潤平は2番」と
言うのだそうである。

「どうしてジュンくんは2番なの?」
潤平が、ばぁばである姑に訊くようになった。
4歳になると、少し知恵がまわるのだろう。


ジュンクンに教えてやり〜」
格別、潤平がその子より劣ってもいないのに
そのような言い方をする。


どうして、子どもたちの前でも差別するのか
娘は納得がいかないし、潤平が不憫になる・・・。


そういうことが、繰り返されるので
あまり実家とは接点を持ちたくない・・・
そのあたりのことは婿殿も心得ていているようだ。


何しろその差別意識は、そのまま婿殿が小さいころから
兄とのあいだでそっくり繰り返されたことらしい。
「オレはいつも期待されない子どもだったんや」と婿殿。
姑にしては長男の存在が絶対で、2番目の男子である婿は
家族のなかで疎外感を持って育った、という。


娘夫婦は、子ども二人を大切に
慈しんで育てているのに、肝心のあちらのばぁばに
ソデにされたのでは、こちらも気分もよろしくない。


うーむ。
ヤマアラシのジレンマ」では、ないけれど
くっつき過ぎると、お互いのトゲが痛い。
かくなるうえは痛くないほどの距離を保って、つきあうしかない。


1歳半の「花楓」は、同じ月齢の従兄弟の腕力にはかなわない。
おもちゃを取り上げられたり、さんざんな目に遭う。
それでも負けてはいない。
「べぇーっ!」思い切りあかんべえをして対抗するらしい。

負けるな、じゅんぺい!かえで!
ばぁばは、つい力んでしまう。



今年はよくぶどうを食べる。