一日周遊の小さい旅
「智に働けば角が立つ。情に棹させば流される。
意地を通せば窮屈だ。とかくこの世は住みにくい」。
夏目漱石による『草枕』の冒頭にある有名な文である。
これほど簡潔に人の世で生きる難しさを語る言葉も少ない。
人は生をうけてから、「競争」と「他者との比較」に
晒されて生きることもある。
本人が死亡した後まで、立派な葬式だとか、花輪が多かったなどと
人は勝手に比較する。
こうした世情から離れて、ゆっくり生きたいと願う。
さりとてテレビの「田舎で暮らそう」は、良くも悪くも
長年都会暮らしをした人間には、なかなか出来そうもない。
そんなとき、鈍行列車の旅もいいなぁと思う。
時間は充分あり、目的地に急ぐ必要も、制約もない。
誰に追い越されても一向にかまわない日々である。
そして地方色豊かな駅弁も食べてみたい。
まずは、手っ取り早い方法として、近隣の倉敷・岡山を
目的地にして、日帰り小旅行を計画してみた。
山陽新幹線は新大阪を出ると、倉敷駅までは、
トンネルが連続して36ほどある。
ホームがトンネルとトンネルの間にある新神戸駅。
とてもではないが、車窓からの景色はまったく見えない。
それに比べると、山陽本線は、
瀬戸内海と山並みと田畑が楽しめる。
初秋には黄金の稲穂があり、
熟した柿がしだれている景色は、風情がある。
片や瀬戸内海に小島が遠景にあり、こころ癒される。
倉敷には日本でも有数の「大原美術館」がある。
また岡山には日本三名園の一つである「後楽園」もある。
いずれも過去数回訪れたことがあるが、何回でも
行ってみたいと思う処である。
のんびり旅の所要時間と、大阪駅から倉敷までの
交通費(片道)について記してみたい。
新幹線は所要時間約1時間で、格安「のぞみ自由席」券は5,150円だ。
一方、在来線の山陽本線は、新快速を利用して相生駅と岡山駅での
乗り換えで約2時間30分の3,260円である。
新幹線よりは1,890円安いが、1時間30分よけいに費やす。
この余分に要する時間が今回の旅行の醍醐味なのだ。
現在は学生向けに春、夏、冬に売り出している
「青春18切符」(5枚1セット)がある。
これは1日乗り放題で、1枚2,300円であり、
だれでも利用でき、買うことができる。
昨今は定年退職者の利用が多いと聞く。
60歳を過ぎるとジパング・クラブなどというJR会員制度もあるらしい。
念のため、JR西日本のサイトで「トクトク切符欄」を調べると、
なんと、JR西日本・鉄道記念日割引切符があった!
10月 1 日から10 月16日までの限定で、
「1日乗り放題が3,000円!」と、ある。
大阪から倉敷までの往復普通電車の切符は6,500円だが
こちらを利用すれば、なんと半額以下の3,000円で収まる。
情報を仕入れるとこうした得も(徳)もあるのだ。
それでは、のんびり一日周遊の旅を楽しんで来ます〜〜♪