「愛と宿命の泉 フロット家のジャン」



先日観たDVDのなかの1本である。
なかなか見ごたえがあり名作である。
予備知識なしに借りたのだが2作目があるようだ。


開墾地での農業を営む上での水の大切さを、泉がもたらす大きな受益を
水のない大変さを、改めて思う映画である。


1920年代のフランス、プロヴァンズ地方のマルセイユに近い町が舞台である。
兵役を終えて帰って来たウゴラン(ダニエル・オートゥイユ)は、
伯父のセザール(イヴ・モンタン)の家の近所に住み、カーネーション作りを始める。


“パペ”と呼ばれ土地の権力者であり甥の自立に協力を惜しまない叔父は、
カーネーションに必要な水を隣の土地から引っ張り、その泉を手に入れたいと願う。
その土地を譲ってもらおうと叔父のパペとウラゴンは隣家に
相談を持ちかけるが断られ誤って殺してしまう。


やがてその土地に後継者のジャン一家が越してきた。
ジャンはせむし男であるが統計などに詳しく、
農業を本で学び一生懸命、家畜や作物作りに精を出す。
よそ者のジャン一家に村人たちの視線は冷たい。
パペとウラゴンは「泉」のありかは伏せており
農業がうまくいかないことを望み、撤退していくことを待っている。


1年目は豊作で収穫があり生活のめどが立つが、翌年は干ばつになり
ジャン一家の生活は、どんどん貧してくる。
泉があることを知らないジャンは妻のエーメや幼い子どもマノンにも
水汲みを手伝ってもらい、山を越えて丘を降りての大変な作業をする。
都会育ちのジャンや妻のエーメのやつれた生活に
村の人たちは知らん顔で誰一人温かい声をかける者はいない。


そんななか、井戸掘りを決意したジャンは自ら仕掛けたダイナマイトで
岩石が顔に当たり命を落としてしまう。


葬儀のあと、悲しみにくれる妻と娘であるが、
ふとしたことで「泉」がその土地にあることを知る。
パペとウラゴンが泉の隠し場で笑いながら水を出している所を目撃した
娘マノンは大きな涙を落として、それを眺める。


第1作目はこれで終わっている。
観ていて疲れ、何とも哀しくなる物語であるが、
娘マノンの「大きな涙」がその後、意味を持ってくるようだ。
2作目は、その娘マノンがパペやウラゴンに復讐を企てるらしい。


続きを借りてこよう、胸に迫る物語である。


それにしてもあの年代において山の貧しい暮らしの中でも
簡素な家のインテリアの素敵なこと。
カーテンやシーツやクッションやキッチン用品もおしゃれである。
妻のエーメはイヤリングやネックレスを身に着け
娘のマノンも長い髪をきれいに結ってもらい可愛いらしい服装である。
生活に逼迫していても気持ちの余裕が感じられ、
日本のそれと描写が違うことを感じる。


古照田