おまけつき散歩

 

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マンサクが咲き始めました、万博公園にて。

 

 アル中(歩中)という言葉が流行っているそうである。

歩くことがおもしろく「体が歩くことを欲する」ことを言うらしい。

歩かずにはおれない、ということか。

最近は熟年や老年のウォーク姿を多く見かけるようになった。

健康志向には一番の妙薬である。

季節の樹木や花を愛で、日光をたっぷり浴びることの心地よさ。

からだが喜ぶこと間違いなしだ。

 

わたしもひそみに倣い、退職してのち日々の歩行を日課としている。

家にいると独り暮らしの家事労働だけでは、運動不足が目に見えている。

健康寿命を少しでも維持するために、きちんとした食生活と

適度な運動は欠かせない。

食べることと毎日の散歩を軽視せずに、仕事の一環と捉えているほどである。

ようやくその生活が習慣化してきた。

 

夏は夜が明け切らない早朝が多い。

5時過ぎには家を出て、6時半のテレビ体操の時間までには帰宅する。

露を浴びた草いきれのする時分の、空気のおいしいこと、

かすかに聴こえる虫の音も最高の耳のご馳走だ。

 

暑い時期以外の散歩は午後、昼食を終えてからにしている。

今の時期、部屋にたっぷり日が射し、こたつのなかで

まどろみたい誘惑にかられる。

このまま昼寝と決め込みたい。

めったにテレビをみないわたしは、午後1時からのBSで映画の

面白そうなのがあると、じっくり見たい気もしてくる。

 

もろもろの欲望と闘うようにして散歩モードに切り替える。

なにしろ「仕事として」の位置づけだ、サボると後ろめたい気がしてくる。

このあたりがA型気質のまじめさ所以か。

 

さて、今日は西に行こうか、東に流れようか。

ここ数年、アホのひとつ覚えのように毎日川沿いを歩き同じコースを戻っていた。

慣れた道は安心だ。

方向音痴なわたしは知らない処を行ったり来たりは苦手なのだ。

ところが最近少しずつ足を伸ばすのが楽しくなり、歩数も増えている。

訪れたこともない街中を歩き、古い民家の庭先を覗き、

新しくできたガーデニングショップのおしゃれな店を発見しては、

面白がっている。

 

そしてその道中にあるのが「パン工房」である。

大きな窯を持つパンやさんである。

焼き立てパンの大好きなわたしの一番のスポットだ。

入らずして通られようか。

 

カメラも携帯も何も携えないわたしが、ポケットに500円玉ひとつ

忍ばせて歩いているのはこのためである。

このパン工房の憎いところは、タダでおいしい珈琲を提供してくれることだ。

惹き立ての香りが充満している店内は、珈琲目当てに入ってくる

高校生や主婦が多い。

1時間おきに焼き立てパンが陳列台にお目見えするのも知っている。

それを見計らって熱々のパンを1個、珈琲とともにいただく。

ああ~至福のときである。

 

お腹を満たし、小さな旅をするがごとく、ささやかな冒険を

繰り返しながら帰路につく。

何と言うぜいたくなひとときであろうか。

散歩にはこのようなおまけがついているのである。

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 アセビ、万博公園にて