80歳の挑戦
汗を玉のようにしたらせ、彼女は、やってきた。
ノートぱそこんをリュックに背負って。
彼女の家は、散歩道の川沿いにあり、わが家から7,8分の距離だ。
「近いから大丈夫ですよ~」
ニコニコしながら、それでもお茶を持って来るのは重たいから
冷たいお茶だけごちそうしてください、と
できるだけ荷を軽くして、来られる。
年齢を重ねると水筒ひとつでもだんだんと負担になるものである。
えらいなぁと思う。
数年前まで文字入力の基本から、ワードで文書作成、
年賀状作りなどを愉しんでいたが、体の不調からしばらくお休されていた。
「いっそのこと、リンゴやお花の絵を描いて遊びませんか?」
「ワードでいろいろ覚えるのも楽しいですが、絵具で色を使うと
からだが喜びます、どうですか?」とパソコン水彩画を進めると
「わたしでもできますかぁ~~」と興味を示してくれ
パソコン画に転向(?)したのはつい最近のことだ。
これから暑さに向かう時期にやる気満々で、その心意気に惚れ
個人レッスンを引き受けた。
ひとコマ1時間45分のレッスンだけれど、半分ぐらいの時間を
彼女は、おしゃべりに費やす。
夫さんが施設に入ってからひとり暮らしになり
誰かと話をしたくて、たまらない。
かといって、だれでもOKというわけではなく、
亡き義母の知人だった彼女は、わたしに全幅の信頼を寄せてくれている。
たまにしかお会いしないけれどお付き合いは40年近くになる。
汗をふきながら、前回までのレッスンの復習に入る前に
ゆっくりさせてくださいねぇ~~~と彼女。
「はい、この時間はすべて自由にお使いください。居眠りしても
おしゃべりしても、ねそべってもOKですよ~」
さながらカウンセリングルームのような体をなしている。
ゆっくり、じっくり、急がなくていいから、好きなモノを
1枚ずつ、描いていきましょう。
絵手紙もいいし、さっそく描いたものを印刷しましょう。
慣れない手つきでペンタブレットを動かしながら
童心に帰ったように、パレットで色を作っている。
80歳からの挑戦・・・
ぜんぜん遅くはないですよ~。
こころとからだが喜ぶこと、しましょう。
心からの声援を送っているところである。