「シニア・ナビ」のドン

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お盆と正月とクリスマスが、いっぺんに訪れたような至福の時を味わった!

子どものころの盆や正月というと、新しい服を買ってもらい

馳走をたらふく食べて、年に一度味わう祭りのようで、待ち遠しかったものである。

娯楽の少ない時代、わくわく感でいっぱいだった。

 

そんなワクワク感を先日、横浜でたっぷり愉しんだ。

子どものように、はしゃいだ!

久しぶりに、おいしいお酒を飲んだのだ。

大人の酒と言っていい。

辛からず、甘からず「会話を肴」にいただく、お酒は

五臓六腑どころか、心の奥深く、浸透した。

最高の上質の時間を共有したと言えるだろう。

 

まだ余韻覚めやらずの感がある。

あれは、夢かまぼろしか・・・。

何しろ、目の前には長年、会ってみたいと恋焦がれた御仁がいる。

それだけで胸がいっぱいになる。

 

シニア・ナビの料理人Gさんが、シニア・ナビの重鎮とも言える「ドン」を

伴い、作品展を訪れてくれたのだ。

Gさんとドンさんは、旧ナビからのお付き合いだといい

ドンさんの囲碁さろんへも通っているようである。

 

彼は大人数のところは好きではないらしく、めったにオフ会などにも顔を出さない。

言ってみればシャイな方なのだ。

だから会う機会も少ない。

本物はいつだって表に出てこない、という感がある。

わたしにしてみれば一遇千載とも言うべき、ドンさんとの

出会いにときめかないはずがない。

 

彼の書く洒脱な文章と、にやりと頬を緩ませる描写に膝をたたき、

共感し、心を熱くしたのは1冊目の著書を拝読したときだ。

在職時、重たいハード本をカバンに収め、通勤電車内で一気に読んだ。

ときどき、プッと声を出して笑ってしまい、慌ててあたりを見渡したものである。

涙もろいわたしは、図らずも透明の水を落としたりもし、困ったものだ。

電車の中で読んではいけない1冊だと納得したことを覚えている。

 

今も噺家のような情緒ある文章を書いておられる。

ひとり旅が好きな彼が書く紀行文も、思わず行ってみたい気にさせる。

最近、関西をひとりでふらりと訪れ、大阪が好きになったと言う

ドンさんに、ますます関心を持っていた。

 

いったいどんな人なのだろう?興味は増すばかりである。

的を射た鋭いコメントで、ときどきブログの作者を震え上がらせる。

そして感謝もされ、いまや妙齢の女性ファンを虜にしている。

 

がっしりした体躯に眼光するどく、パナマ帽をかぶり、

白い麻のスーツに身を包んだドンさんをイメージした。

まるでゴッドファーザーに出てくるドンのようにだ。

それも若いアルパチーノではなく、しわがれ声の一代目のドンである。

渋いドンが好きだ。

 

 そんなドンさんが会場に現れたとき、あまりの意外性というべき

イメージの違いに心底、驚いた!

「ええ~っ!!」

プライズの連続である。

 

そこには、柳に折れんばかりの細い身と柔和なお顔があった。

女を泣かせる優男の趣がムンムンだ。

勝手に想像したマフィアの親玉とは、えらい違いである。

きっと若いころは、モテたに違いない。

いや、多少歳を食った男は、人生の妙味がミックスされ、今も

巷のマダムを悩ませるのではないだろうか。

 

それにしても人間の勝手な思い込みは恐ろしい。

こんなに違うものかと、多少想像を膨らませていたわたしめを

まったく良い意味で裏切ってくれた。

「馬には乗ってみろ、人には添ってみろ」

ご本人が酒席の宴で言っていた。

なるほど・・・である。

 

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黄色や赤や、青の色とりどりの鮮やかさが、まるで宝石のように輝く

美しい夜景をみながら、妙齢の女2人と優男2人は向かい合った。

横浜は「みなとみらい」の絶好地で会場は70階にある洒落たレストランである。

シニアになってもお洒落心を失わないイイ女?と

知的なダンディ男が会席するにふさわしい場所だ。

セッティングは今回Gさんたちがやってくれた。

 

女性の一人は、今回初めてお会いする神戸生まれの作陶家Sさんだ。

彼女とは、同じ関西でノリが良く、波長が合う。

いつまで話しても飽きない人柄を感じさせる女性だ。

せっかく同宿してくださったのに、部屋に戻ったら二人ともパッタンキューで

宴の続きは無理だった。

お互い若くはないなぁ・・・。

 

料理人Gさんとは数回、お目にかかっている。

でも彼が饒舌になるのを初めてみた。

ニコニコと愉しそうに、夢心地で話す彼に今までとは違う親近感を持った。

「いや~他のひとにおしゃべりを譲っているだけです」

謙虚さを訴えるが、いやいや、そればかりではないだろう。

 

彼は、ご自身をモデルにした?恋愛小説を執筆中で、心のなかで

かつての甘い思いや切なさが思い出され、彼をして雄弁にしていたのではなかろうか。

それと、少ない仲間うちで心をさらしている、とも感じられる。

「たまにはいいのよ!お酒の力を借りてどんどん胸のうちを

さらしなさいよ。お姉さまたちが聞いて差し上げますよ~」などと

女たちは、けしかけ、、会話はずんずん盛り上がる。

ほんとは、わたしも作陶家さんもGさんより年下なのだけど。

それにしても、おいしい愉しい酒宴だ。

 

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目の前のドンさんは、ずっと優しいまなざしで、皆のやりとりを聞いている。

彼は聞き上手だ。

そしてほめ上手でもある。

これを手練手管というのだろう。

黙って耳を傾けながら、ここという時に、痛くて甘い言葉を発し

なるほどなぁと、またも膝を叩くのである。

年の功では片付けられない、人間の奥深さが彼には感じられる。

「甘いも酸いもかぎ分けた人生がいい。清濁併せ飲む生き方がいい」

とろけるような眼差しの奥から、力強く言う。

 

口数少ない?わたしも一生に一度というぐらい、はしゃいでしまった。

「大阪のひとの口には適いませんよ~」

ドンさんに褒められた。

 

小さなオフ会で、大きな余韻を残した横浜での3人3様の人間模様を

忘れないだろう。

ネット時代に感謝である。

「シニア・ナビ」のドンさまにお会いできたことが何よりの収穫だ。

 セッティングしてくれた料理人さん、作陶家さん、ありがとう。

そしてドンこと、パトさん、おおきに、ですぅ。