年下男


行きつけの美容室に30歳に手が届かんとする、イケメン美容師がいる。
柔和な顔や話し方が、わが娘婿どのに似ていて親しみを覚える。
特別に指名はしないけれど、行くといつも専属のようについてくれる。


わたしは美容室での他愛のない会話は、あまり好まない。
たいてい持参した文庫本に熱中するか、目を閉じるなどして
おしゃべりをシャットアウトしている。


しかし、そのイケメン美容師とは時々話しが弾む。
その男性美容師に赤ちゃんが生まれ、ついそちらの
話に耳を傾けることになるからだ。


「パパと言うようになりました!」
「マンマという言葉を覚えたんです!」
目を細めて赤ん坊の日々の成長を伝えてくれる。


なかなかの子煩悩で家族をしっかり守っていることが
会話の中から感じられる。
華やかに見える美容の業界で、そのまじめさは価値がある。


ポツリポツリと語る家族像のなかに彼の、母上のことがある。
小学生のころに両親が離婚し、母がひとりで弟とボクを育ててくれた。
だから母には、感謝しているのだという。


その母に彼氏ができ、再婚することになった。
父親もとうに再婚しており、母のそれには大賛成であり
それぞれが新しい伴侶をみつけ、しあわせに暮らしてくれたら
それが一番と、孝行息子は寛大だ。
恋の進展も、のろけ話もずっと聞いてあげているようだ。


聞いてみると・・・
なんと、彼の母はまだ40代後半
再婚相手は初婚、10歳年下なのだそうだ。
ということは、父になるひとは息子と、一回りも違わないことになる。


最近は、年下男との結婚なんて珍しくもないけれど
よほど魅力的な女性なのだろう。
見も知らぬ熟年女性の結婚話にこちらは興味津津。
いったいどのように知り合ったのかと思っていると・・


母親はいま東京在住。
ひょんなことから「チョークアート」という教室に
通い、その技術を身につけ、その師である女性と
共同で事業を立ち上げた。


その事業が縁で彼氏と出あい、結婚に至ったそうである。
二人の成人した子どもを持つ女性と、初婚の年下男。
驚くことに相手の母親が彼女を気に入ったのだという。
ふ〜ん、世の中にはドラマのような話があるのだなと感嘆して聞いた。


普通、息子は母を女として見られなくて
母親の再婚に難色を示すものだが
イケメン美容師の兄弟は、なかなか懐が深い。
きちんと愛され、育てられた結果なのだろう。


そういえば、わが家も夫の一周忌を済ませたころ
息子が宣言してくれた。
「これから、オカンの好きなように生きたらいいで〜〜」と。
母親の恋愛や結婚もOKなどと理解を示してくれていた。


わたしは、自身のことに照らせばやはり男は年上がいい。
年下男はどうも、何だか頼りなくていけない。
(あれ?そういえばナビのOさんちは年下夫だ・・
ごめんなさい(^◇^))



余談だが、シニア・ナビの理学博士がこのところ
「夫婦論」なるものをブログのなかで熱く語っている。
特に熟年世代の夫婦の軋轢など、ご自身の体験に基づいているのか?と
思うほど真に迫り、迫力満点である。


夫婦が縁を結び、添い遂げる条件を色々挙げている。
当たらずとも遠からじ・・・で微妙であるが、
多少真理を突いているともいえる。


わたしには相手をどこまで深く「尊敬」できるかにそのカギが
あるように思える。


くだんの年下男と熟年女性のそれには
当然、それらの思いが含まれるのだろう。
しあわせに、これからの人生を生きて欲しいと、他人事ながら願う。