小さなしあわせを

ぶらりと散歩の途中で娘宅を訪れる。
二人のチビの顔見たさに、ふいと行く。
潤平が幼稚園に行くようになると、以前のように
わが家を訪ねてくることも少なくなった。
だからこちらから訪なう。


ばぁばが行くと必ず彼らの好きな「焼きたてのパン」つきであるから
玄関でのお迎えは、まず袋の中を覗くのが先だ。
ポケモンのパンは?、アンパンマンのパンは?」
ふたりが口々に聞く。
その時間帯によって店頭に並んでいないことがある。
リクエストに応えるのも難しい。
ポケモンが良かったのにぃ」
お目当てのパンがないと口をとがらし潤平が拗ねたふりをする。


「もうすぐ夕食だからパンは明日の朝食べよう!」
ママが言ってもふたりは聞かない。
メロンパンをひと口潤平がちぎり、アンパンマンパンをちょっぴり
かえでにちぎってやる。
ふたりは満足そうに喜んで口を動かしている。


ほどなくすると、かえでは、ばぁばの耳元でささやく。
「パンもっとほしい〜」
要領のいい彼女の要請に、ばぁばは、内緒で口にほおりこんでやる。
まったく、すり寄られると甘いばぁばである。


ママが食事の支度にかかっっているとき
足の踏み場もないほど散らかった部屋でふたりと遊ぶ。
本を読んでやったりカードをしたり。
2歳違いの兄妹は、距離が縮まった感があり対等に見える。

時どき潤平が、妹が機嫌よく遊ぶ妹のおもちゃを取り上げるなどの
ちょっかいを出す。
その度にかえでの大きな泣き声が響き、潤平はママにいさめられる。
妹に返すとき「ありがとうは?」などとお兄ちゃんから
お礼を求められても最近は言わない。


それまで、どんなときでも兄貴に言われれば素直にありがとうと
言っていたのを、最近は2歳児なりに理不尽さを感じるのか
大きく目を開き、あっかんべぇをしながら「いやっ〜〜」と応えている。
いつまでも妹は従順ではないよ、潤平。


かえでは「アンパンマンを見る〜」とテレビをつけると
DVD機器をオンにして、慣れた手つきでCDを探している。
小さい手だから探している途中で落としてしまう。
やっとの思いで拾い上げ、両手でうやうやしく目の高さに上げると
ふ〜〜っと息を吹きかけ、ゴミを払うしぐさをする。
思わず笑ってしまった。
パパやママを真似ているのだろう。
そして機器にいれるや、自分で操作し勝手に観るようになっている。
「へぇ〜2歳がそんなことするの?」ばぁばは、たまげる。


今日の夕餉は「ハンバーグステーキのデミグラスソースかけ」と
「パスタとブロッコリーのサラダ」そして玉ねぎや人参や椎茸が
入ったスープである。
デミグラスソースも手作りでまろやかな味である。
なかなか美味だ。
アトピーの湿疹がでている潤平のために
なるべく薬を使わず、食べ物で治そうと
野菜をたっぷり使うのだそうである。


和食の多いばぁばも久しぶりのこってり料理を堪能した。
潤平もかえでもさっきパンをほおばったにも
関らずしっかり、満足そうに平らげている。


ふたりの子育てを慈しみながら、食べることを大切にしている
娘の日常に、今度は真の親ばかで褒めてやる。


ムコ殿は今の時勢にならい給料の3割カットをされていて家計も厳しい。
それでも生活を見直し、無駄を省き、育児に専念している。


娘よ、それがいい。
いずれ子どもたちは、否が応でも巣立っていく。
今のうちにたっぷり愛情を注ぎ、しっかり子育てを楽しんだらいい。
そのときが来たら、一生懸命働いて将来に備えたらいい。
今のささやかなしあわせを家族4人で大切にして欲しいと、ばぁばは願う。


潤平が2歳のころ、かえでが生後8ヶ月ぐらいのときか。