子守り奮戦記

娘が、ばぁばを迎えに来た。
車に乗り込むと、驚いた!
ひょうきんな「顔」が3つ並んでいる。
何とも昭和の時代を彷彿させる風貌ではないか!



潤平も、一番下の蒼輔もさっぱりと「丸刈り」にされている。
マルコメ味噌の宣伝に出てくるボクみたいになっている。
潤平の丸刈りは毎年のことだから見慣れているが
5カ月の赤ん坊が、演歌歌手の重鎮、北島三郎顔負けの髪型に
なっているのには、おかしくて噴き出してしまった。




かえでに至っては、サザエさんちの「ワカメちゃん」の様相である。
なんと今時、古風な・・・
少ない猫毛をまとめられるほどの長さで、女の子らしい髪型だったのに、
あっさりバッサリ耳元で揃えられている。
ママの行きつけの美容室でカットしたというのだけれど・・・・。


「なんとまぁ〜〜〜すっきりしたね〜」
取り繕って言うと、3人ともニコニコしている。
まだ文句を言うチエはないようである。
「もう、暑いからさっぱり散髪したのよ〜」
うう〜ん?ちょっと滑稽な気がしないでもない。


「おもしろい頭だねぇ〜」
つい、3歳に本音で語りかけてしまう。
「そんなこと言わないでくれる?かえでが気にするから・・・」
「わが家では、可愛い可愛いと育てているのに」と、ママに怒られてしまった。


世間は夏休みである。
わが孫ふたりも一人前に夏休みである。
ふだんは二人の幼稚園の送迎などが、ママの大仕事だ。
時間が違うから行ったり帰ったりを繰り返している。
彼らの幼稚園が休みだとトモダチとの交流や、ママ友との付き合いも
さすがに途絶え、みんなで、べったり家に張り付くことになる。


何をするにも、出かけるにもチビたちを引き連れ
難なくこなしていたママも、さすがに3人となると
予想外に手がかかるようである。


夏休みに入り、ママから手伝いを頼まれることが多くなった。
ばぁばは、細々とやっている仕事の合間を縫っては、いそいそと出向くことになる。


ママは最近メキメキとおしゃれ心が出てきて
「エクスティション」とか言う、つけまつげの施術を自宅でやってもらうことになった。
そのために子どもたちを見て欲しいと言ってきたのだ。


あまり勧められることではないが、ばぁばも若気の至りで
おしゃれ染めなど、今思うと体に負担がかかることを
いろいろやってきた・・・
娘も同じらしい。
しようがない見守ることにした。


上のふたりは数時間、ママの手が離せなくとも勝手に遊んでくれるが、
5か月の赤ん坊は、そうはいかない。
おまけに母乳で育てているから、フニャフニャ言いだすと手に負えない。


一度の施術で約2時間、2回連続して行うらしい。
完了まで2回駆り出されることになる。


1回目が終わり、ほっとしているママに
「ママ、きれい〜」
子どもたちは素直に褒める。
「あんまり変われへんね!」
わたしも素直に言った。


2回目に、施術の人がやってくる前に娘にクギを刺された。
「このあいだみたいなことを言わんといて〜」
「あんまり変われへんやなんて・・・その人の前で失礼よ」
確かに・・アイスミマセヌ。
ちなみに婿殿は「いやぁ可愛くなったなぁ」と言ってくれたそうである。


5カ月の蒼輔が、眠たいのに眠れなくて泣きじゃくる。
いつもおっぱいを飲みながら寝るので口が寂しいのだろう。
焦って施術のひとが失敗しないように、またママも泣き声など聞くと
落ち着かないだろうからと暑い中、表に出て抱っこしながら歩きまわる。
それでもなかなかスンナリ寝てはくれない。
5か月の赤ん坊は母乳の割には、がっちり肥えて漬け物石みたいに重い。
肩がパンパンに張り、腕がだってきた。


あまり困ったので2回目は「おしゃぶり」を用意していた。
さて、うまく含んでくれるかと思いきや・・・
ポイと吐き出すとまた涙をこぼし、切なそうに泣く。


上二人のときは、抱っこしてブラームスの子守歌など
繰り返し歌ってやると、コロリと寝てくれたものである。
静かにばぁばの胸に顔をうずめているので
眠ったかな!と顔をひんまげて覗くと
彼も上目遣いでギョロリ・・・?


「ベビカーに乗せて揺すると眠るから」と言われ
涼しい通路で揺するけれど、相変わらず
足を投げ出し、ふんぞりかえってフニャフニャ言う。


少し学習したばぁばは、押して、歩き回った。
隅から隅までマンションの通路を往復すること数回。
振動のリズムが心地いいのか、ようやく眠ってくれた。
やれやれである。


子どもはこうして泣いたりぐずったりしながら大きくなっていくのだ。
子育ては一大事業である。
ときどき、ママに風穴をあけてやりたい。


夕方、賑やかに食卓を囲みながら、みなが元気に
育ってくれていることにしあわせ気分を味わう。