親は子どもに何が残せるか
知人女性Oさんは、第3号被保険者である。
ようやく65歳になり国民年金を受け取れるようになった。
満額がどれぐらいになるのか、他人の懐など知る由もないが、
受給手続きのときに『何に使うのか』と、金融機関から訊かれ
彼女は「すべて趣味に使う」と答えた!と笑っていた。
彼女の2人の子息はそれぞれ独立しており
夫は定年退職後もまだ働いている。
パート勤めをしていた数十年のあいだにOさんは
自分の稼いだ分で海外の諸国を見て歩いている。
「いま本当に欲しいものや、買いたいものもないし
旅行も、さほど行きたいと思わないのよ〜」
今はスポーツジムとおけいこ事に熱中している。
Oさんの知人は、そんな彼女の生き方に反し
『どれだけ子どもに残してあげられるか』と
旅行や趣味などの出費を抑え
せっせと子息に残すために貯蓄に励んでいるらしい。
またIさんは『いいかげん、娘が親離れしてほしいわぁ』と
未婚の娘のパラサイトに根をあげている。
いまNYで資格取得のため勉学に励み
それ以前にも他の国へ数回留学しており向学心旺盛な娘のために
生活費などを含め1000万円以上は使ったと、こぼす。
夫の退職後の出費だから痛い。
おまけに近くに住む長男夫婦の第一子が来年、中学に入る年齢だが
早くも大学の学費は出して欲しいとアテにされている。
親に余裕があると子どもは経済的支援を期待するものなのか。
わが身を削ってでも子どもに何がしか残してやりたいと
思うのも無理からぬことではある。
しかし、わたしはどちらかというとOさんの考え方に近い。
「自分の愉しみ」を優先する。
元々生活を維持するのがせいぜいだから、子どももわきまえている。
葬式代ぐらいは、残せるだろうと思うが「家族葬」で十分だ。
昨今の華美な葬儀など不要だ。
多少の保険でカバーできる。
二足三文の価値しかない住居も足しにはなるだろう。
ない者のひがみで言うのではないが
子や孫に「お金」を残す必要があるだろうか。
確かに子どもたちの喜ぶ顔は親としても嬉しい。
出来ることに満足感や充足感も得られる。
でも子どもは、己の力量で稼ぎ生活を営んで欲しい。
子どもたちが苦悩し躓き、何らかの助言を求めてきたら
わたしは、しっかり耳を傾け自信を持って精神面での援けになりたい。
子より早く生まれた親は、その分人生経験は豊富である。
親の生きざまを得とみせたい。
生きているうちに自分を精いっぱい愉しみ
生き生きと暮らす親の姿をみて安心して欲しいとも思う。