餅と母

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年末に娘婿の実家でついたというエビ入り餅が

おいしくて、久しぶりにじっくり味わっている。

 

ぷっくり膨らんだ餅の表面は、薄いピンクの花が開いたようにきれいで

見ているだけで、じわ~っと正月らしさを感じる。

焦げた匂いもたまらない、食をそそる。

そのままちぎって醤油につけ口にほおばる。

シンプルな食べ方だ。

 

 何とも言えないエビのほのかな匂いと焦げた餅と

醤油がミックスされ、古典的な正月を思い出す。

 

 最近は、真空パックされた切り餅が市販され、主流だが

かつては、どこも家々で年末に餅をついていたから

餅と言えば丸いのが当たり前だった。

一番、餅らしい感がある。

 

 還暦を過ぎた今でも、小さいころの餅つきの情景を思い出す。

もち米をセイロで蒸した時のかぐわしい匂いが庭いっぱいに広がる。

屋外にレンガを組み立て簡易のかまどを作り、薪を炊いて蒸していた。

 

 炊きあがったもち米を臼に入れ、杵でつく。

あの杵うすの餅つきは、こねる人の頭上で振りおろす杵と、

こねる人とのタイミングが合わないと危険だ。

 頭にぶつかりそうで、見ていても子どもながらに怖かったものである。

 

餅つき一つに、ふだんは喧嘩ばかりしている父と母の

息のあった連携作業があり、感心したものだ。

つきあがると熱々を丸め、まず「三宝」さん用に大、中、小と丸める。

わたしたち兄弟もふぅふぅ言いながら餅を丸めていく。

 

 モロフタと称される四角の木の箱につきあがった熱々を入れ込み、

3が日を過ぎるころに包丁を入れ、切り餅にしていた。

餅のなかには前述のようなエビ入りもあったが

わが家はあんこ餅も多かった。

焼いたらすぐになくなる人気者だ。

 

 サツマイモをふかし、きんとんのようにつぶし

そのなかについたばかりの餅を入れ、あいだに餡を

挟む「ねえぼ」と称されるものもある。

 

母の自慢の逸品で、九州はM県に昔から伝わる郷土料理である。

モロフタに流し込まれた餅には、上にきな粉がかかり

サンドイッチのようで贅沢なお菓子代りになる。

来客のときのお茶うけや、気の利いたおやつの少ないころの

格好の食べ物だった。

 

 手間のかかる「ねえぼ」は、母が生前中は、手間を惜しまず、

長い間その労に耐え、嫁した娘たちに送ってくれたものだ。

亡き夫の好物にもなっていた。

 

正月と言えば「ねえぼ」を思い出す。

そして母の節くれだった手を思うのだ。

小柄な母の身体に似合わず、指はゴツゴツと骨太だった。

味噌やチマキや餅など、母を思いだす食べ物は多い。

 

 こんがり焼けた餅を、砂糖醤油のつけあぶりにして食べていると

また母を懐かしみ、ありがとうの言葉が胸に迫る。

 

今週のお題「私の年末年始」