久しぶりに・・・・ぽたぽた

猛暑が続き、亜熱帯のような毎日に辟易しているけれど
早朝の散歩は、秋が忍び足で訪れているのを感じる。
川沿いの草を刈ったあとは、稲穂のような枯れた匂いと
虫の大合唱である。


日中暑いときは、どこへも出かけたくない。
このところ、わが家を少しずつ磨いている。
昨日は仏壇をしっかりゆっくり掃除してみた。
いずれ、息子に委ねようと思っている。
わが家のそれは、白木で作られた他とまた違うモノである。
わたしが嫁してくる前から、ある。


引き出しや戸棚のなかや扉など、ふだんはそこまで掃除することなどない。
年数経たいま、手垢や汚れで茶色く変色している。
重曹に還元水をまぜて、掃除の液をつくりスプレーし、あとふき取ると
おもしろいぐらいに、さっぱりと木の肌を見せる。
位牌もひとつずつきれいに拭いてみると
黒々と光輝き、存在感を増す。
毎年盆と正月にやっているけれど
たまにはていねいに磨くのもいい。
ガラスの扉もピカピカだ。


そうこうしているうちに、スナップ写真が出てきて
それらに見入っているうちに、せきを切ったように
あふれるものが・・・
ぽたぽたと止めどがない。


かつて実母も、夫もまだ生きていたころ、
一緒に淡路島に旅行したときのものである。
このころ、母はまだ病気のかけらさえ感じないときである。


小高い丘を登るとき、高齢の母が一番早く登り
わたしたちは、はぁはぁと、あとに続き
足腰だけは自慢できる母が、にっこりと収まっている。


母が病を得て、死ぬ半月ほど前に自宅に連れて帰り
家で看ているときの写真も出てきた。
まだまだ、じっくり写真を見ようという気にならず
封印していたものである。


親戚が見舞いにおとずれ、痩せてひとまわりも小さくなった母が
赤ん坊のようなあどけない表情でベッドの
まわりを囲む叔父や叔母たちに挨拶をしている。


傍らで、わたしたち姉妹は赤い目を潤ませて同じように
従兄弟たちと写真に納まっている。


胸がきゅんとなる。


こんなときがあったのだ。
親は幾つになっても生きていて欲しい。


夫も、夫を案じていた実母も、同じ年に逝っている。
久しぶりに見た母や夫の元気なころのスナップ写真に
汗と涙で、ぐしゃぐしゃになるひと時だった。