子どもたちは「花の種」

近年、家族間の痛ましい事件や、家族をめぐるさまざまな問題が
顕在化されているなか、児童虐待、熟年離婚の増加、介護疲れに
よる殺人などが後を絶たない。


こうした社会に、夫婦の関係、親子の関係はいま、どうあるべきか
薬物や非行の専門である、水谷修氏の記事を読んだ。
数年前に「夜回り先生」という本を出版された方である。


彼は、学校でも夜の町でも子どもを叱ったり
怒鳴ったり、なぐったりしたことがないという。
それは子どもたちを花の種と考えているからだ。
どんな花の種も、植えた人間がきちんと
育てれば、必ず美しい花を咲かせる。
もし、しぼんだり枯れたりするなら
それは大人にそうされてしまった被害者である、
いつもそう思い子どもたちに寄り添って生きてきたという。



過去のことはいい。すべてを受けいれ明日に向かって一緒に生きていこう」
と、子どもたちへのメッセージとして書かれたものであり
メールアドレスを載せた結果、のべ20万通ほどの相談のメールが
あったという。


薬物や非行についての相談もあったが
ほとんどがリストカットや処方薬等の過剰摂取、自殺願望、
引きこもり、いじめで苦しむ子どもたちだったという。


これらの子どもたちに共通しているのは、
親や教師から責められ続け、またリストカットや、
引きこもりを続ける自分自身を責め続けることだった。
「こんなわたしでも生きていていいんですか」という
重い問いで終わっているという。


社会の閉塞状況が弱者へ


いま、日本の子どもたちが、「いじめ」、「不登校・引きこもり」、
リストカット・自殺」「非行・犯罪・薬物乱用」という
4つの問題を大人に突きつけている。


この背景に、バブル崩壊後の20年にわたる日本の経済的、
社会的閉塞状況がある、と氏は訴える。


多くの父親たちがリストラされ、仕事を失い、給料が下がった。
多くの母親たちが、家計を支えるために幼い子を預け、
家に残すなどしてパートに。
そんななか社会全体がイライラしてきた。
父親は会社でのうっぷんを愛する妻や子どもたちにぶつけ、
母親は父親からのイライラを子どもたちにぶつける。
社会の弱者であるこどもたちにイライラが収束されている。


いま、日本の子どもたちの大半は、家庭でも、学校でも、
正当に評価され、認められることなく、叱られ続けている。


「何をやっているんだ」
「遅い」
「こんな事もできないのか」
日々、親や先生たちの言葉で追い込まれる。


そしてそのイライラを「いじめ」という形で
仲間にぶつけたり、こころを閉ざし「不登校・引きこもり」に
逃げ込んだり、こころを病み「リストカット・自殺」へと向かったり
ふてくされ、「非行・犯罪・薬物乱用」に陥っているという。


このような環境下で、家庭のなかで、この1年あたたかい言葉と
追い詰めるような厳しい言葉と、どちらが多く飛び交ったか、
問うている。


後者の場合、子どもたちから家庭という最も大切な
心やすらぐ場を、最後の逃げ場を奪っている、と指摘する。


子どもの前で夫婦喧嘩をしないで・・
それぞれの家庭を優しい言葉で満たして欲しい・・と結んである。


諸々、胸がふさがるような哀しい事件の背景が
いかに家庭のありかに関わっているか、わかるような気がする。
かつての大家族は、その面では子どもの逃げ場があり
親も少し風穴を開けられた。


家庭のなかでの居場所、居心地のよさを
大人も子どももしっかり持ちたいものである。